通信制高校からの大学進学
通信制高校に通っている人、通うことを検討している人の中には、大学への進学を目指している人もいると思います。
ここでは通信制高校からの大学進学は可能なのか、受験に向けてどんな準備をしておくべきかを確認していきましょう。
通信制高校から大学への進学率
平成29年度のデータによると、各課程から大学等へ進学した割合は下記となっています。
・全日制高校 … 55.6%
・定時制高校 … 12.8%
・通信制高校 … 17.7%
※学校基本調査「高等学校の学科別状況別卒業者数」ならびに「高等学校(通信制)学科別状況別卒業者数」(e-Stat)を参照
通信制高校に通う生徒のうち6人に1人以上の人が大学等へ進学をしており、定時制高校よりも高い割合でしたが、全日制高校と比べると低い割合となっていました。
なお、こちらのデータは専修学校(専門課程)への進学者を含んでいないデータとなります。
2人に1人は大学等への進学をしている全日制高校と比べると少なく感じる結果ですが、背景として、通信制高校には高校卒業を目標としており、大学進学を目指していない生徒が少なからずいることが考えられます。
10代の学生だけでなく、高校を卒業せずに社会人になった大人も、高卒資格取得のために通信制高校に通っているケースが少なくないため、全日制高校と比べて進学を選ぶ人が少ないのでしょう。
同様に、通信制高校には進学以外の道を目指している生徒も一定数在籍しています。
例えば美容師になるために美容関係のコースを選んでいたり、芸能や芸術、スポーツなどの分野での活躍を視野に入れている人たちは、大学進学はせずに高校卒業後にそれぞれの分野へ進んでいくことも珍しくありません。
データだけを見ると全日制高校に比べてかなり低い進学率ではありますが、在籍している生徒の属性にも違いがあることを認識しておくと良いでしょう。
一方で、通信制高校には事情により学校への登校が難しかった生徒が在籍しているため、基礎部分の学習をメインに行っていることが多く、大学進学のための学力がつきづらいとも言われているのは事実です。
スクーリングの回数が少ない場合、全日制高校の生徒に比べて学習進捗に差が出てしまうのも十分考えられることです。
もちろん少ないスクーリングで大学進学を果たしている人もいますが、大学進学を目標に据える場合には、登校日数を多く設定したり、大学進学を目指せるコースを選択するなどした方が、より可能性を高めることに繋がるのはほぼ間違いないと言えます。
通信制高校からの受験は不利になるのか
全日制高校も通信制高校も、高校卒業という意味で同等の資格です。
そのため、通信制高校出身だからと不当に不利になることはありませんが、自分で計画性を持たないと学習を進めるのが難しいという点があることは意識しておく必要があるでしょう。
まず、通信制高校では高校卒業の学歴を自宅メインの学習で取得することが目的となっていることが多いです。
レポート等も比較的易しいレベルのものとなり、受験勉強にならないということもありますので、進学を考えている場合は、勉強面や進学面のサポートが厚い学校を選ぶなどする必要があるでしょう。
また、登校日が少ない場合は、先生に質問して疑問を解消できる時間が限られているため、わからないところで受験勉強が一旦ストップしてしまうことも考えられます。
モチベーション管理の面でも、周囲に進学を目指している人を見つけづらい環境となりますので、自分でモチベーションを保つ工夫を行うことが大事になります。
ただし一方で、部活動等の時間も少ないため、必修科目を勉強する時間以外は大部分を受験勉強に使うことができるというメリットもあります。
全日制高校と通信制高校は環境が大きく違うので、大学進学希望の場合、どのように受験勉強を進めていくかを事前に考えておいた方が良いでしょう。
通信制高校から大学進学を目指すなら
前述のように、通信制高校と全日制高校は毛色が異なっているため、大学進学を目指す場合は通信制高校の環境を考慮した対策が必要になります。
以下を参考に、可能な限り実践すると良いでしょう。
(1)自分で勉強を進める意識を持つ
大学進学コースでない場合は、通信制高校のレポート課題の提出とスクーリングだけで受験勉強をカバーするのは難しいと言えます。
そのため、入試に合格するためには自分で受験勉強を進めていく必要があるのです。
通信制高校の学習ペースに慣れてしまうことなく、自ら大学入試の学習を進めるという意識を持つことが一番大事です。
自分を律し、日々自発的に学習を進めることができれば、それだけで大学進学を果たすのも不可能ではありません。
世の中には高校に通わずに高卒認定試験を突破し、そのまま大学合格をする人もいます。
基礎的な部分を通信制高校で学んでいるのであれば、発展的な内容を自分で学習し、不明点があればスクーリングの時に先生に聞いてみる、などの方法で自己学習を進めていけると理想的です。
(2)大学進学コースを選ぶ
例えば一ツ葉高校では大学進学コースを設けており、京都大学や早稲田大学など難関大学への合格者輩出の実績があります。
大学進学コースの生徒専用のフロアがあるようで、受験勉強に集中できる環境を整えているだけでなく、大学受験専門の講師による少人数の指導を受けられるところを魅力としています。
他にも、ルネサンス高校では個別指導型の予備校「個別指導Axis」と提携したプログラムで受験のサポートを行ったり、第一学院高等学校ではウイングネットというweb授業システムを活用して学力アップを目指していたりします。
上記のように通信制高校には、大学進学を目指したコースを開設しているところがありますので、進学希望の場合は検討すると良いでしょう。
同様に、サポート校にも大学受験に強いところがありますので、必要に応じてこちらも検討しましょう。
ただし、大学進学コースがある通信制高校でも、それぞれ異なった内容で進学のサポートを行っていますので、詳細を確認して一番自分に合ったものを選ぶことが大切です。
(3)通信制高校のメリットを活かす
通信制高校のメリットは時間を比較的自由に使えるところにあります。
受験科目以外の授業に必要以上に時間を割く必要もありませんし、部活動等も少ない環境です。
そのため、希望の進学先に進むために重点的に勉強したい科目がある場合は、その時間を使って学習をすることができます。
また、通信制高校のメリットを活かしながらスポーツや芸術の分野での活動を続け、結果を残すことができたら、スポーツ推薦や文化活動推薦で大学入学を狙うことができるかもしれません。
自由な時間をフルに使ってこちらを狙うのも一つの方法ではあります。
なお、全日制高校同様に指定校推薦の枠がある通信制高校もありますので、希望大学の推薦枠がある場合にはこちらに挑戦してみても良いでしょう。
更に、通信制高校にいる進路指導の先生は、こちらの事情を理解したうえでのアドバイスをくれますので、積極的に相談をしてみると、不安が取り除けたり、実用的な助言をもらえたりするかもしれません。
まとめ
通信制高校からの大学等進学でネックになるのは、いかに受験勉強を進めるかというところでしょう。
選んだ通信制高校が易しいレベルの場合、卒業するための必要最低限の学習だけで大学進学をすることは簡単ではありません。
しかし逆に、自分から学習を進められるタイプの学生には、自由時間が多いことはメリットになります。
自分の受験科目のうち、苦手科目の学習時間を重点的に取るなどすると、効果的な対策ができると思います。
自分で受験勉強を進めるのか、それとも大学進学コースを選んだり、サポート校の助けを借りるのかなど、早い段階から受験勉強の計画を立てておく必要があるのは間違いないでしょう。
また、通信制高校の進路指導の先生にも、適宜相談をすると、入学までの道筋を示してくれたりすることもあるでしょう。
自分の性質に合ったサポートを付けながら、大学受験勉強を進めるのが、通信制高校からの大学進学の王道となります。