通信制高校からの就職

通信制高校という選択肢を考えたとき、大学等への進学を考えてない場合、気になるのは卒業後の就職率ではないでしょうか。
データを元に現状を確認し、その上で通信制高校卒業後の就職について考えてみましょう。

通信制高校卒業者の進路における就職率

平成29年度のデータでは、通信制高校の就職に関するデータは下記となっています。

 

・卒業者数 … 52,266人
・就職者数 … 10,247人
・卒業者に占める就職者の割合 … 19.6%

 

※学校基本調査「高等学校(通信制)学科別状況別卒業者数」(e-Stat)を参照

 

データ上は、通信制高校を卒業した人の5人に1人くらいは就職をしている計算になります。
なお、公共職業能力開発施設等入学者は514人となり、卒業者全体の1%程度です。

 

更に、大学や専修学校に進学する人と進路不詳(死亡含む)の人を除いた数で計算すると、就職した人の割合は約33%となりましたので、進学しない人のうち、約3分の1の人は就職をしたと考えて良いでしょう。

 

 

では、通信制高校を卒業した人がどのような仕事に就いたのかという部分ですが、就職先の業種トップ5は下記となっています。

 

・製造業 … 約20%
・宿泊業、飲食サービス業 … 約15%
・卸売業、小売業 … 約11%
・建設業 … 約10%
・生活関連サービス業、娯楽業 … 約9%

 

※学校基本調査「高等学校(通信制)卒業者の産業分類別就職者数」(e-Stat)を参照

 

通信制高校ではない高校のデータでは、「製造業」が約39%、その次が「卸売業、小売業」の約12%となっており、いずれの場合でも製造業がトップであることは変わりませんが、「宿泊業、飲食サービス業」は約6%と、通信制高校の約15%に比べて少ない値となっていました。

 

高校を卒業して就職する人は製造業に就く割合が多いですが、通信制高校の場合は宿泊業や飲食サービス業に就く人が全日制等の高校に比べて多いようです。
既に希望業種が決まっている人などは、参考にしていただければと思います。

 

通信制高校は就職において不利になるか

通信制高校を卒業すると、全日制高校の卒業と同じ高校卒業の資格を得ることができます。
しかし通信制高校はその特徴から、不登校等を経験した生徒が多数在籍する学校というイメージがあったのは事実です。
現在はそのイメージは払拭されつつあり、自由なキャリア形成のために通信制高校を選ぶ人もいますが、就職面接の際に面接官がそのイメージを持っている可能性もあることを念頭に置いておく必要はあるでしょう。

 

面接時に、どうして通信制高校に通っていたのかを聞かれることもあるかもしれません。
その際には、「自分には〇〇という目標があり、そのキャリア形成のために通信制高校に通っていた」などのポジティブな理由を伝えるか、不登校などのネガティブな理由だったとしても、「自分のペースで勉強を進めることで自信を取り戻し、成功体験を積み重ねて、アルバイトも行い、社会経験を積むことができた」などと、それをポジティブな成功体験に変換して伝えるなどする工夫が必要でしょう。

 

さらに、「通信制高校でレポートを自分で進めた経験から、全体を管理しながら自発的に物事を行っていく能力が身に付き、それがこれまでのアルバイトでも発揮されて評価された」などと、通信制高校に通っていたことをアピールポイントに組み込むことができれば、通信制高校に通っていたことが必ずしも不利になるということはないのではないでしょうか。

 

企業側が通信制高校について質問してくる際は、せっかく採用しても人間関係などで悩んでしまうのではないかと不安になっている可能性がありますので、その不安を取り除きつつ、自身のアピールに繋げるようにすると良いでしょう。

 

通信制高校から就職するためにできること

では、通信制高校からの就職を希望している場合、どのような準備ができるかを確認していきましょう。

 

(1)資格や技能の習得をする

通信制高校の中には、専門技術を学べるところがあります。
ルネサンス高校の「美容師養成コース」、八洲学園高等学校の「コンピュータプログラム」など、様々な学校で資格取得も目指せるコースやプログラムが用意されています。
既に自分の進みたい道がはっきりしている場合は、将来につながる学習を進めておくことのできるこうしたコースを選び、学習や資格取得をしておくことで、就職の際のアピールポイントになります。

 

あるいは、一般の通信制高校に通っている場合でも、空いている時間を使って任意の資格等の勉強を行うことは可能です。将来進みたい道がはっきりしていなくても、汎用性のある語学(英検やTOEIC、TOEFL)やコンピュータ関連(MOSなど)の資格勉強をしておくことで、就職において多少有利に働く可能性もあります。
取得した資格と就職希望の職種との関連が強い場合は、さらに有利となるでしょう。

 

(2)就職へのサポートが厚い高校を選ぶ

例えばNHK学園高等学校には、進路情報が集まる進路指導室の用意があります。
就職ガイダンスを行っているだけでなく、ハローワークとも定期的に情報交換を行っているようで、就職の助けとなる情報へのアクセスが確保されています。

 

また、別の学校では、美容関係のコースの生徒へ、卒業後に美容業界の就職についてアドバイスを行っているところもあります。
こうした業界特化のサポートは、特定の業界への就職を希望する人にとっては、とても魅力的なサポートになるのではないでしょうか。

 

各学校、進路や就職指導にはそれぞれ違いがありますので、卒業後に就職することが決まっている場合は、就職サポートの強い学校を選べば、通信制高校でも不利になる可能性を減らすことができるでしょう。

 

(3)社会経験を積む

通信制高校は自由時間が多いというメリットを活用し、アルバイトなどの社会経験を積んでおくことも、就職のためになります。
アルバイトによっては社員登用があるところもありますので、希望の職場にアルバイトとして入れたのなら、そのまま社員登用を目指すのも良いでしょう。
その場合は、企業側も実力を見てから社員登用ができるので、Win-winの関係を築けます。

 

アルバイト先に社員登用がない場合でも、業務を通じて成し遂げたことはアピールポイントになり得ます
「仕事ぶりが評価されてリーダーに上がった」でも良いですし、「ここを改善して売り上げを伸ばした」というのも良いでしょう。
「〇〇というソフトを使っていたので使用できる」などのアルバイトを通じて得た知識や技能も、希望就職先での仕事に関連がありそうであれば伝えておくと、研修の手間を省ける人材として良い印象を与えることができるかもしれません。

 

アルバイトの経験は、全日制高校の卒業生もアピールするものです。
時間の自由度が高い通信制高校のメリットを活かし、将来を意識して経験を積んでおくことができると、就職面接を有利に運ぶことができる可能性が高まるでしょう。

 

(4)進学を目指す

高校卒業後の就職を目指して対策を行うことも可能ですが、もし大学や専門学校へ進学することが可能であれば、就職面ではより有利となります。
資金面、環境面等問題がないのであれば検討をしてみても良いでしょう。
進路指導に力を入れている通信制高校もありますので、学校のサポートを使うのも有効です。

 

なお、進学した場合は、週5日の登校が必要になる可能性も高いので、生活リズムに変化が生まれる可能性があることを注意しておきましょう。

 

まとめ

通信制高校の卒業生の中で、進学をしない人の3分の1程度は就職をしています。
卒業後に就職を希望する場合は、将来に向けての学習であったり、資格取得、アルバイトでの社会経験など、自分のアピールポイントを準備しておくことが大切になります。
自由に使える時間が多い通信制高校では、そうしたものの用意をいかに行うかで就職の難易度が変わってくるでしょう。

 

通信制高校に入ったことで自分はどのように成長できたのか、それを使ってどのように貢献できるのかを伝えることができれば、就職面接等で全日制高校出身の人に比べて一方的に不利になってしまうということもないのではないかと思います。