通信制高校のメリットとデメリット

通信制高校は全日制・定時制高校とは毛色が違うものとなり、独自のメリット・デメリットがあります。
主な特徴を挙げながら、通信制高校を選ぶことによってどんなメリットとデメリットがあるかを確認していきましょう。

メリット

(1)自分の生活スタイルに合わせた勉強ができる

高校には学年制と単位制があり、多くの通信制高校では単位制が導入されています。
学年制では学年ごとのカリキュラムが作られており、それら全てを修了して、はじめて次の学年に進級ができます。
そのため、1つでも足りない科目があると進級できず、留年となってしまうのです(原級留置ともいいます)。
一方で単位制では学年の区切りがなく、卒業要件としては最低74単位の修得となっていますので、初年度に修得した単位数が少なくても、翌年以降に遅れを取り戻すことが可能となっているのです。

 

また、通信制高校ではスクーリング(登校して先生から授業を受けること)も必要となりますが、全日制同様に週5日の登校をするものから、少ないものですと年4回程度で済むものまでありますので、各個人が生活スタイルに合わせた学習を進めることができます。

 

そのため、下記のような人にとっては通信制高校を選ぶことに大いにメリットがあります。

 

・家計を助けるためにアルバイトの時間を多く割く必要がある人
・スポーツや芸術・芸能の分野で活躍することを目標としており、そのための時間を取りたい人
・不登校・体調面に不安があるなどで週5日の登校が難しい人
・その他の理由で登校・学習スケジュールに柔軟性が必要な人

 

学校での学習以外に使える時間を確保しやすいのは、通信制高校の大きなメリットと言えるでしょう。

 

(2)人間関係の悩みを減らせる

前述した通り、通信制高校ではスクーリングの少ないものがありますので、毎日のように学校のクラスメイトや教師との人間関係に悩む必要がありません。
いじめや不登校を経験して週5日の登校スタイルが合わない人、友達ができるかどうか不安になってしまう人、同級生や教師にどう思われているかなどの人間関係に心配することなく学習を進めたい人にとっては、通信制高校は適した環境と言えるでしょう。
通信制高校に不登校等を経験した生徒が比較的多いのは、登校頻度の自由度が高いために心配を取り除けるという理由が大きいのです。
なお、一般的には週1日〜の登校頻度のところが多いので、更に減らしたい人はそれ以下の登校頻度の学校・コースを選びましょう。
例えばルネサンス高校では、タブレットやスマートフォン、パソコンを使用して学習とレポート提出を行うWebコースを設けており、インターネットで学習を進めることで、スクーリングを最短年4日としています。

 

(3)先生との距離が近い

全日制の高校では先生がクラス単位で生徒を受け持っていますが、通信制では受け持つ人数が比較的少ないため、先生と生徒の距離が近くなる傾向にあります。
授業がレポート主体だと、授業の時間に個別指導を行うだけの時間的な余裕が生じることもあるため、一人ひとりに合わせた学習も可能です。
特に私立の場合は、メンタル面でのサポートも行えるようにカウンセラーの資格を持った先生が在籍していたりすることがあり、何か困ったことがあれば相談できる環境が整っています。

 

また、通信制高校には10代の人だけでなく、成人した社会人やその他様々なバックグラウンドの人が入学してくることがありますので、多種多様な生徒と接した経験が豊富な先生たちのサポートは自然と厚くなり、距離が近く感じるのです。

 

(4)学費が比較的安め

家庭事情によっては高校進学にあたって学費面での負担を心配している人も多いことと思います。
全日制高校に比べ、通信制高校は学費を抑えることができますので、そういった家庭にとってはメリットが大きいと言えます。
まずは公立のデータを確認してみましょう。

 

公立の場合
 <通信制高校>
  ・入学金 … 500円
  ・受講料 … 350円程度/1単位(自治体によって差あり)

 

 <全日制高校>
  ・入学金 … 5,650円(43都道府県)
  ・授業料 … 7,595円(※1)

 

通信制高校の場合は、その他教材費等を含んだとしても3年間で10万円以下にとどまることが多いのですが、全日制高校の場合は、その他費用として修学旅行費・PTA会費等を含めると、学校教育費の合計が242,692円(※1)となり、通信制高校よりも大きい額となります。

 

続いて、私立のデータは下記となっています。

 

私立の場合
 <通信制高校>
  ・入学金 … 10,000円〜50,000円程度
  ・授業料 … 5,000円〜12,000円程度/1単位(年間約20万円前後〜)

 

 <全日制高校>
  ・入学金 … 162,122円(※2)
  ・授業料 … 258,542円(※1)

 

※1…平成26年度 子供の学習費調査(文部科学省)より
※2…平成28年度私立高等学校等の生徒等納付金平均額(年額)(文部科学省)より

 

通信制高校でも私立の場合は学校やコース、スクーリングの回数などにより学費に開きがあり、一年で20万円〜80万円ほどになります。
私立全日制で授業料にその他費用を合わせると学校教育費としては740,144円(※1)となり、こちらも通信制高校に比べて費用は高くなる傾向が強いことがわかります。

 

なお、高等学校等就学支援金という制度を活用することで、既定の収入レベル以下の世帯(年収910万円程度が基準)は返還不要の就学支援金の支給を受けることが可能です。
費用負担を減らすことができますので、当てはまる場合には申請を行うと良いでしょう。

デメリット

(1)スケジュール管理を自分で行わなくてはならない

自分のペースで学習を進められるのが通信制高校のメリットですが、だからこそ、学習のスケジュール管理は自分で行う必要があります。
提出するレポート数は月5〜8本が標準と言われていますが、管理ができないと3年で単位が足りずに卒業できず、4年目以降も在籍し、最終的に退学をしてしまう人もいます。
スケジュール管理に不安がある場合は、サポート体制が整っている私立の通信制高校を選んだり、スクーリングの回数が多いコースを選んだりすると良いでしょう。

 

また、場合によってはサポート校を活用することも検討しましょう。
サポート校とは、通信制高校に通う人がスムーズに単位を取得して3年で卒業できるようにサポートをしてくれる教育施設で、塾や予備校に近いものです。
サポート校単独では高卒資格が取得できませんが、通信制高校と同時に入学することで、学習を支援する授業を受けられたり、学習計画を含む生活面の相談ができたり、精神的なサポートも受けられたりします。
別途費用がかかりますので、自分の学習計画と相談して、自分一人の力で学習を進めるのが難しそうな場合に活用することをお勧めします。

 

(2)生徒間の交流が少ない

全日制高校では毎日顔を合わせるクラスメイトがいるので、自然と友達が作りやすい環境になっていますが、通信制高校で、特にスクーリングの回数を少なめにしている場合、自然発生的に友達を作るのが難しいと言われています。
友達を作りたいと思っている人は、体育祭や文化祭、芸術鑑賞会などの自由参加の校内イベントがあれば、出席して他の生徒と交流を深めると良いでしょう。
通信制高校でのこうしたイベントは、友達を作るために参加している人も多いので、目的がマッチして友達を比較的作りやすいのです。
また、通信制でも部活のある学校であれば、部活に入部することで友達を作ることが可能です。
学校内で友人を作ることが難しい環境の場合は、バイト先で同年代の人と人間関係を構築しているという人もいます。

 

まとめ

通信制高校は、時間的な自由度が高く、費用面でも負担が比較的少ない選択肢です。
人間関係の構築を求めていない場合も、不要な心配をせずに学習を進められるところがメリットです。
ただ一方で、学習進捗の管理ができていないと単位不足で3年以上在籍することになる可能性もありますので、自身のスケジュール管理能力を確認し、必要に応じて登校日数の多いコースを選んだりサポート校の活用を検討する必要があるでしょう。