通信制高校の卒業率

通信制高校を選択肢として考えたとき、多くの人が気になるのは無事に卒業できるかというところです。
データで通信制高校の卒業率を分析し、入学後に問題なく卒業するにはどうすれば良いのかも含めて確認をしていきましょう。

 

卒業率に関するデータ

前提として、通信制高校は全日制高校に比べて卒業率を算出するのが難しいです。
通信制高校は基本的に単位制を採用していること、前の学校から単位を引き継いで転編入してくる学生が少なくないことなどにより、全ての学生の在籍年数が3年とは限らないからです。
それぞれの学生が何年で卒業していくかにばらつきがあるのが通信制高校なのです。

 

そこで、在籍生徒数に対する卒業者数の割合を「在籍卒業率」として計算したデータが下記です。

 

<平成27年度の在籍卒業率の平均値>
・公立通信制高校 … 16.7%
・私立通信制高校 … 32.5%

 

※「通信制高校の現状と卒業率に関わる要因の調査分析」(政策研究大学院大学)を参照

 

3年制の学校の場合、1年生〜3年生を合わせた在籍生徒数のうち、3分の1である3年生だけが卒業者となるので、仮に誰も退学等をせずに卒業していくと、理論上の在籍卒業率は約33%となります。

 

上記から、私立通信制高校ではおおよそ1学年分の人数が平均として卒業している状況であることと、一方で公立通信制高校は1学年の半分程度しか卒業できていない状況であることが伺えます。

 

また、入学者に対する退学者の割合も見てみましょう。

 

<平成28年度 公立通信制高校>
・入学者(公立) … 24,757人
・退学者(公立) … 5,546人
・入学者に対する退学者の割合 … 約22%

 

<平成28年度 私立通信制高校>
・入学者(私立) … 88,249人
・退学者(私立) … 7,546人
・入学者に対する退学者の割合 … 約9%

 

※学校基本調査「入学者数・退学者数(本科)及び単位修得者数」(e-Stat)を参照

 

実際には入学した人が全員その年に退学するわけではないので、参考程度のデータとなりますが、ここ数年大きく入学者や退学者の数字の傾向が異なることはありませんでした。

 

一般的に通信制高校は私立の方が卒業率が高いと言われていますが、データ上もそれを裏付けるような結果となっていることがわかります。

 

通信制高校の卒業要件

通信制高校から卒業するためには、大きく3つの要件を満たす必要があります。

 

(1)在籍期間が3年以上である

高校に3年以上在籍していないと卒業をすることはできません。
学校教育法で修業年限が3年以上と定められているためです。

 

ただし、転入や編入の場合には、それまで在籍していた高校の在籍期間も引き継げたりします。

 

(2)必修科目を含む74単位以上を取得している

学習指導要領に定められた「必履修教科・科目」(必修科目)を含んで各学校が定めた74単位を取得していない場合、3年在籍をしていても卒業をすることはできません。
必修科目の例としては、「国語総合」「数学T」などが挙げられます。

 

こちらも転入や編入の場合には、前学校で取得済みの単位を引き継ぐことができます。

 

(3)30単位以上の特別活動に参加している

特別活動とは、「集団活動を通して心身の発達と個性の伸長を図り、自主的かつ実践的な態度を育てるような活動」のことを言うのですが、これに30単位分以上参加していることが卒業要件となっています。
具体的には、ホームルームや体育祭、クラブ活動、体験学習などがこれに当たります。

 

活動内容は学校によって異なりますので、気になる場合は事前に確認をしておくと良いでしょう。

 

 

上記の3要素を全て満たすことで、高校の卒業が認められ、高卒の資格を得ることができます。

 

通信制高校を無事に3年で卒業するためには

前項で説明した3要素のうち、一番ネックになる部分が「74単位以上の取得」だと思います。
通学回数の多いコースを選んでいたり、サポートの厚い学校を選んでいる場合には、問題なく取得を進められることもありますが、そうでない場合には、自身の勉強に対するモチベーションや学習計画によって単位取得の進捗が大いに左右されます。

 

基本的に、通信制高校ではレポート課題の提出を行い、スクーリングで面接指導を受け、単位認定試験を受けることで単位の取得となります。
難易度は一般的に易しいレベルと言われていますが、レポートの提出をしなかったり、スクーリングを欠席したりすることが続くと、単位の取得ができないままとなってしまうことでしょう。
その結果として3年で卒業できなかった場合は、学費を支払って4年目に突入することになったりもしますので、日頃から単位の取得状況には気を配っておく必要があります。

 

なお、通信制高校では単位認定試験で不合格となってしまっても、基本的には再チャレンジを行うことができるため、何度も挑戦すればほとんどの人が合格できると言われています。
仮に試験で失敗してしまったとしても、諦めずに単位の取得を目指すことが大切です。

 

それでも不安な人は、学習に対するサポートの厚い学校やコースを選択するか、サポート校を併用することを検討しましょう。

 

卒業率を上げる学校の取り組み

特に私立の通信制高校では、手厚いサポートを行っているところが少なくありません。
そうしたサポートによって卒業しやすい環境が整っているところも多いので、どのような取り組みがあるか確認し、適した学校やコースを選ぶと、卒業できない可能性を減らすことができるでしょう。

 

(1)個別指導

個人のペースに合わせることで、学生が学習についていけずに脱落することを防ぎます。
集団学習が苦手な学生も安心して勉強を進められるという点のメリットもあります。
カウンセリングや精神面のケアも行ってもらえるところがあり、着実に1歩ずつ前に進める学習形態です。
例として第一学院高等学校の「個別指導コース」などがあります。

 

(2)スマートフォンやタブレットを使用した授業

誰でも持っているスマートフォンやタブレットが使用できることで、時間や場所にとらわれることなく学習を進められるというメリットがあります。
レポートの提出も郵送ではなくインターネット上で行えるところが多いので、レポート学習と提出にかかる手間を削減できるコースです。
ルネサンス高等学校の「Webコース」などが当てはまります。

 

(3)教員を通じたサポート

例えばクラーク記念国際高等学校では、「学習心理支援カウンセラー」の有資格者の教員を増やしたり、生徒が先生を選べる「パーソナルティーチャー制度」を採用したりすることで、学生にとって学習しやすい環境を教員という面から整備しています。
単位や卒業に関して不安が生まれたとき、相談ができる相手がいるのは大きなポイントです。

 

 

その他にも少なくない数の通信制高校が、スクールカウンセラーを配置するなどして学生のサポートに取り組んでいます。
学校選びとコース選びは卒業に大きく関わりますので、よく検討してから選ぶことをおすすめします。

 

まとめ

通信制高校の卒業率について確認をしてみると、公立より私立の方が卒業する人の割合が多い傾向にあることがわかります。
通信制高校の特性上、自宅での学習におけるモチベーション管理や計画性によって単位取得の進捗が左右されるため、無事に卒業するためには必要単位数を取得できているかについて常に気を配っておく必要があると言えます。
学習面やメンタルケア面においては、私立通信制高校の方が手厚いサポートを提供していることが多く、そのために卒業率に関するデータに差異が生まれていると考えて良いでしょう。

 

もちろん公立通信制高校から卒業している人もいるので、自分で学習をしっかり進められるかを考えたうえで、必要に応じてサポートが厚い環境を選ぶということが、3年間で通信制高校を卒業するためには大事だと言えそうです。